ぽかぽか、ひだまり日和

障害者就労支援施設、うつ病、転職活動・・・。ひだまりのようなあたたかい場所を見つけられるように、いろいろ試行錯誤しています。そんな日々をつづっています。

障害者就労支援施設見学記 その1

自分のあまりの仕事のできなさ加減に落ち込み、うつ病になり仕事を休職した。自分は他の人より劣っている。他の人が当たり前にできることが、自分にはできない。

 

心療内科で受けた能力テストに現れた能力の偏りも、仕事での不得意分野とピタリと合致していた。自分は障害者だ。その思いが強まり、休職をきっかけに障害者としての生き方を探り始めた。

 

まず、障害者枠での就労を考えた。どんな仕事があるんだろう。お給料は?生活できるのかな?職場ではどんな風に扱われるんだろう・・・。

 

そもそも、精神障害者手帳を取得しなくてはならない。

それは私にとって今までいた世界から未知の世界へ一線を超える、二度と戻れない、そんな覚悟のいる行為に思えた。

保健所の窓口へ相談に行き、取得に必要な書類を受け取った。母に話した。70になった

小さな母が、力なく肩を震わせて泣いている。

ひどいことをしてしまった、と今更ながら思った。

 

どんよりと沈んだ気持ちと、もしかしたら自分らしく無理をせず働ける場所を見つけられるかもしれない、という期待をごちゃまぜに抱え、3つの就労支援施設を見学した。

ひとつはいくつもの施設を全国展開している有名施設Ⅼ、ひとつは障害者枠の転職エージェントの会社が運営している施設R、そして、ホームページに描かれたメッセージが一番熱くて人間臭かったZUTTO!だ。

 

先の2つの施設は、同じ匂いを持っていた。職員は大学の体育会系サークルの部員風。

若くて、はつらつとしている。そしてあまり世の中を知らない。漢字も知らない。プログラムも体操や企業研究など、学生活動のノリが強かった。私には、キラキラまぶしすぎる。

 

なによりLからは「はじめに確認しておきますが、就労支援施設というのは、職業を紹介するところではありません。」Rからは「実際40代すぎの転職は厳しいです。企業としても20、30代を雇って育てていきたいというのが本音です。」とはっきり言われてしまった。ごもっともだけど。

 

ZUTTO!は違った。

まず初めて訪ねた時、I藤さんがじっくりと話を聞いてくれた。

そして、I井さんもじっくりと聞いてくれ、その後「自分を発達障害だ、精神障害者だって決めつけて枠にはめ込まないほうがいいですよ。できている部分が見えなくなっちゃうから。」と言ってくれた。

この言葉は、大きかった。それまで自分を障害者だ、とさげすみ押し込めていた私を、解き放ってくれた。

「そして、いつでも、何度でも体験に来てください、うちはいつでもウエルカムです。

自分が心からここに通いたい、と思えるようになったら正式に手続きを進めましょう。」

と言われた。

そんな、いいの・・・?甘えちゃうよ?

 

ZUTTO!は利用者がやってみたいと要望をあげると、そのためのカリキュラムを企画してくれる。そのために必要な書籍なども購入してくれる。

決められたプログラムをこなしていくのではなく、利用者と職員の皆さんが共に話し合いながら課題が進められていく。しかも利用者一人ひとりやってみたいこと、目指す方向は違うから、利用者のオリジナルな課題、プログラムなのだ。

 

ある人は「MOS資格受験のための準備」ある人は「フォトショップエレメンツでの画像処理スキルアップ」「個人ブログ開設」ある人は「ドア表示掲示制作」「タイピング練習」・・・

みんな自分がやってみたいことに取り組んでいるから、いきいきとしている。そして、その多様な要望をすべてすくい上げ、手助けしてくれる技術と懐の深さ、大きさが職員さんにある。また、パソコンマスターの利用者さんもいる。

O澤さんが、私の「ブログで稼げたらなあ・・・」というつぶやきも、すくいあげてプログラムに組み込んでくれた。おかげで何年来の重い腰があがっちゃったよ。実はずっとやってみたかったんだ。でもなんかずるずると、ね。結果はどうあれ、動き始めることができた、それだけでも大きな意味がある。やってみたからわかることってたくさんあるしね。

 

2度目にお邪魔したとき、K石さんが私のロッカー、名札、ファイル、そしてマグカップまで!用意しておいてくれた。それぞれに貼る名前シールまで・・・。

戸惑うくらいあたたかい。恐縮してお礼を言うと、「え?でも当たり前のことだから」

K石さんは忙しい仕事の合間になんだかんだと面倒を見てくれる。いち見学者なのにいいんでしょうか・・・と言ったら

「じっくり時間をかけて、自分が心からここに通いたい、と思えるようになったら正式に手続きを進めればいいのよ。」

すごいところを見つけちゃった・・・。

 

今思い出したけど、(あんまりつらくて記憶にふたしてたから)

4月から移動した職場には、私の机がなかった。正確にいうと、2人で1つの机を共有するしくみでもう一人が占有し、新参者の私はいつもすみっこの作業スペースに座っていた。

大人なら、それは受け入れなければならないのだろう。私だってそれはわかってた。

でもやっぱり嫌だったんだよね。すごく嫌だった。悲しかった。

物理的にも精神的にも、居場所のなさは私をじわじわ追いつめていった。

 

ZUTTO!は私に居場所をくれた。

なにかを強要することはなく、自分のペースで起きあがるのをそっと待っていてくれる。

「今日はだめだった。明日もだめかもしれない。でも、そんなの明日になってみないと

わからない。明日だめでも、いいじゃない。だめだ~と思った次の瞬間にすこしでも自分のできることをして、ほんの少しでも前に進めたら。」

先輩利用者のMさんの言葉があたたかく響く。

ちぢこまっていた心が、少しずつほどけていく。

春がくるまで、あとほんの少し、ここでひなたぼっこさせてください。